Lions’ Commentary on UNIX (Ascii books)

UNIXのソースコードと解説の有名な本です。数々の逸話があり、これが正式出版された時(1998年)は歓喜し、予約して購入して、絶望しました。PDP-11のハードウェア、アセンブリ言語がさっぱりわからなかったからです。1998年でもPDP-11はすでに化石になっており、そのハードウェアを解説した書籍(参考文献としてあげられているPDP-11 HandbookやPDP-11 Processor Handbookなど)も手に入りませんでした。そして10年以上たち、ふと思い出して検索してみました。先に挙げた参考文献もpdfで手に入りました。良い時代ですね。せっかくだから埃をかぶっていたこの本も読んでみました。OSのソースコードはシンプル、解説は簡潔でありながら要を得た素晴らしい物です(所々怪しいところもありますが)。ソースの量がもともとそれほど多くないので把握も容易です。翻訳の質は及第。丁寧な訳注などもありますが、いくつかミスもあるので出来れば原文にも当たるべきです。1970年代に出会っていれば間違いなく手放しで賞賛したであろう名著です。しかし、今読む本としてはあまりおすすめできません。問題点として・PDP-11のハードウェアやアセンブリ言語が殆ど書かれていない。この本だけでこの本に書かれているコードを理解するのは不可能である。・Cのコードが古い。K&R以前であり型やポインタの操作が非常にいい加減で理解しづらい。8進数デフォルトなのも強敵。・スタックのリターンアドレス書き換えなど、とても推奨できないテクニックが多用されている。などが上げられます。特にハードウェアの解説が少ないのは致命的であり、読者層が恐ろしく狭まったでしょう。この本を買って、理解できた人が何人いたのでしょうか。復刻するならハードウェアの解説も欲しかったです。とはいえ、これだけシンプルなOSソースコード解説は他にあまりありません。TanenbaumのMINIX本など、他のOS本が肥大化して理解困難になっている今、この本は貴重です。やる気にあふれているか、周りにこの本を読んだことがある人がいるならおすすめできます。この程度のUNIXをだれかPCと現代的なCに移植、解説してくれませんかね…褒めちぎること間違いなしなのですが… お前がやれといわれそうですね。