輝きたいの

1984年にTBSで放映されたドラマ『輝きたいの』（全4回）のシナリオである。当時はまだ幼くて山田太一に興味のなかった僕は、本作をリアルタイムでは見ていないのだが、たまたま先ごろBS-TBSで知らない間に再放送されていて、あっ！ と気づいて3・4話だけ何とか間に合って見ることができた。「ここにはドラマがある」。山田太一は脚本家の勘でそんな風に思い、女子プロの世界に興味を持ったという。それをTBSの大山勝美プロデューサーに話したところ、当時女子プロの独占中継を行っていたフジテレビに交渉し、日本女子プロレスの全面協力も得てくれた。そのへんの経緯はあとがきに書いてあって面白い。主人公は「何かパッとしたことがしたい」と考えている女性・良子。ドラマでは、これがデビューの今井美樹が演じている。しかし読んでいると、祥子（ドラマでは畠山明子）という別の女の子の方が、実質的な主人公ではないかと思えてくる。このどんくさい祥子と、足の悪い美江（ドラマでは戸川京子）の友情がいい。また、貧しい家の少女・由加のエピソードもなかなかいいのだが、如何せん全4話という尺のため、あまり深掘りされないのが残念。これは本（シナリオ）では分からないことだが、ドラマではエンドクレジットに、シンガーソングライター遠藤京子（現・響子）の歌う主題歌「輝きたいの」が流れる。これがけっこうグッとくる。少し前に、元女子プロレスラーの北斗晶がプロをめざしていたときに励まされた曲として広く知られ、再びの脚光を浴びたことがある。山田太一ドラマって、主題歌もさりげなくいいのである。